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外国人技能実習機構の実地検査における弁護士立会いの必要性

1. はじめに

外国人技能実習機構(以下「機構」といいます。)は、技能実習法に基づき、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を目的として、実習実施者に対する実地検査を行います。しかし、実地検査の結果によっては、実習実施者に対して重大な行政処分が下される可能性があり、その影響は実習実施者である事業者にとって極めて大きなものとなります。
そのため、機構の実地検査には、技能実習制度に精通した弁護士の立会いは、実習実施者が不当な不利益を受けることを防ぐために必要です。以下では、弁護士が立ち会うことの必要性について、法的側面・実務的観点から説明します。
※法的な代理人として立ち会うことは、士業の中でも弁護士しかできません。

2. 実地検査の法的枠組みとリスク

機構の実地検査は、主務大臣の委任を受けた職員によって行われ、次のような法的枠組みに基づいています。

(1) 実地検査の種類

•定期検査(監理団体は1年に1度、実習実施者は3年に1度)
•臨時検査(関係者からの相談・申告・情報提供があった場合に直ちに実施)

このうち、臨時監査は、実習実施者の不正・違法に対する疑念が生じた状況下で行われますので、実習実施者として、法的に防御できる体制で臨む必要があります(当然ながら、不正を隠蔽等するとう意味ではありません。)

(2) 実習実施者が直面するリスク

技能実習法を含む出入国関係法令違反(不法就労、適正な技能実習の未実施、虚偽報告、改ざん、欠格事由該当など)、労働関係法令違反(不法労働、賃金未払、労働時間超過など)がある場合、改善勧告、改善指導がされます。それでも、改められない場合、改善命令の発出(技能実習法第15条)や実習認定が取消(技能実習法第16条)になります。違反が重大な場合は、いきなり実習認定が取消になることもあります。
認定取消が行われると、現に在籍する技能実習生や特定技能外国人の就労は、直ちにできなくなります。また、新たな技能実習の受入れ、特定技能外国人の採用が5年間できなくなり、事業の継続に重大な影響を及ぼします。そのため、検査の際に適切な防御策を講じることが極めて重要となります。

3. 弁護士立会いの必要性

実地検査時に弁護士が立ち会うことで、次のようなメリットが得られます。

(1) 法的助言による適切な対応

実地検査では、機構職員からの質問や要求に適切に対応する必要があります。しかし、実習実施者が法的知識を十分に備えていない場合、不適切な回答や誤解を招く表現によって、重大な行政処分を受けるリスクが高まります。
弁護士が立ち会うことで、以下のような対応が可能となります。

•事実関係の整理と適切な回答のサポート
•不必要な情報提供や誤った表現の回避
•機構職員の質問意図を正しく理解し、適切に応じる助言

(2) 行政処分に対する防御策の構築

実地検査の結果、機構が法違反を指摘した場合でも、事実誤認や法的解釈の違いによる不当な判断が下される可能性があります。弁護士が立ち会うことで、以下のような防御策を講じることができます。

•実習実施者の主張や証拠を適切に整理し、機構に対して説明
•行政処分が行われる前に、指摘事項の改善サポート
•予想される不利益処分に対して行政不服審査や訴訟を視野に入れた対応を準備

(3) 実地検査の適正な運用を確保

実地検査の際、弁護士が同席することで、検査手続が適正に行われているか確認し、不当な要求や権限を超えた指導が行われることを防ぐことができます。
具体的には以下のような点を確認します。

•機構職員の検査が技能実習法に基づいた適正な範囲内で行われているか
•実習実施者に対して不当な圧力や過剰な指導が行われていないか
•機構職員の指摘が法的根拠に基づいているか

(4) 実習実施者の精神的負担の軽減

実地検査は、実習実施者にとって大きなプレッシャーとなります。特に、機構職員から厳しい指導や追及を受けることで、適切な対応が難しくなることもあります。弁護士が同席することで、実習実施者の精神的負担を軽減し、冷静かつ的確に検査に対応できる環境を整えることができます。

4. 具体的な立会いの進め方

実地検査時に弁護士が立ち会う際の具体的な手順は以下の通りです。

(1) 事前準備

•実習実施者と打ち合わせを行い、必要な書類や証拠を整理
•過去の指導歴や行政処分の有無を確認し、対応策を策定
•実地検査の流れをシミュレーション

(2) 実地検査当日の対応

•機構職員の質問に対して適切に助言し、誤解を招かないよう対応
•記録を取り、検査内容を詳細に記録(後の異議申し立てや反論資料に活用)
•法的根拠のない要求があった場合、適切に指摘し是正を求める

(3) 実地検査後の対応

•機構からの指摘事項について、法的観点から評価し、必要な改善策を助言
•改善報告書の作成をサポートし、適切な表現と法的根拠を明記
•万が一、行政処分が行われた場合には、不服申し立てや訴訟を視野に対応を検討

5. まとめ

外国人技能実習機構の実地検査は、実習実施者にとって大きな影響を及ぼす可能性があるため、適切な対応が求められます。技能実習制度に精通した弁護士が立ち会うことで、法的助言、行政処分への防御、実地検査の適正確保、精神的負担の軽減など、さまざまなメリットが得られます。
特に、改善命令や認定取消しといった重大な処分を回避するためには、事前準備を徹底し、実地検査当日に冷静かつ適切に対応することが不可欠です。そのためにも、弁護士のサポートを受けながら、万全の体制を整えることが重要です。

 

機構の実地検査が発生する前に、技能実習制度に精通した弁護士へご相談をすることをおすすめします

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