監理団体の行うべき実習監理とは、技能実習生の雇用契約の成立のあっせんと技能実習の実施に関する監理の両方を業として営む行為です。技能実習生の職業紹介からその後の技能実習の監理までを一貫して同一の団体が行う必要があります。
技能実習法38条では、「監理団体は、自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせてはならない。」と定められており、違反の場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(技能実習法109条4号)。
したがって、監理団体が、文字どおり名義を貸して、他の機関が技能実習監理の中核事業の全部を行う場合はもちろんのこと、中核事業の一部を、他の機関に委託すると技能実習法38条が禁止する名義貸しになることに注意が必要です。
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法令違反等への対応
監理団体で発生するリスクのある法令違反
パターン①:名義貸し
パターン②:監査業務における不備
監理団体が行う技能実習監理の中核事業として、技能実習計画の作成指導、入国後講習、定期監査、臨時検査、訪問指導、通報義務等があります。これらを実施しないことにより、法令違反が生じます。
いずれも重要な業務ですが、定期監査を例に挙げると、
- 技能実習の実施状況の実地確認
- 技能実習実施責任者及び技能実習指導員からの報告徴求
- 技能実習生の4分の1以上との面談
- 実習実施者の事業所における設備の確認及び帳簿書類等の閲覧
- 技能実習生の宿泊施設等の生活環境の確認
等を行う必要があります。これらの具体的な監査業務を行なわず、また、実際の監査内容と一致しない虚偽の監査報告書を外国人技能実習機構(OTIT)に提出するといった法令違反が発生しています。
パターン③:手数料・キックバックの受領
技能実習法28条では、監理団体が、外国送出機関を含む関係者から、監理費以外の手数料や報酬等名義を問わず金銭を受け取ることを禁止することが定められており、違反の場合は6月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります(技能実習法111条2号)。
したがって、監理団体が、外国の送出機関から手数料(キックバック)を受け取ることはもちろんのこと、外国の送出機関との間で、技能実習における契約の不履行について違約金を定める覚書を締結するようなことも、技能実習法28条違反になることに注意が必要です。
また、監理団体が、技能実習生のパスポートを保管することも、法令違反となります。
改善勧告・許可取消等に発展してしまった場合の対応策
対応①:原因分析・再発防止策の策定
処分の対象となった法令違反行為の分析を行い、その発生原因を洗い出します。担当者固有の問題なのか、業務フローが確立されていたのか、業務フローが実行されているかについてのチェック体制ができていたのか、法令違反についての認識があったのか(ただし、法令を知らなかったことをもって免責される訳ではないことに注意を要します。)等発生原因が何であるかを徹底検証することが再発防止の第一歩となります。
対応②:改善案の検討
原因を特定できれば、その原因を除去する具体的改善案の策定を行います。
監理団体内での法令に関する再教育・再研修に始まります。組織を支える個々の職員のコンプライアンス意識を高めることで組織としてのコンプライアンスを確立します。また、コンプライアンスに裏打ちされた業務フローの再構築、チェック体制の確立が必要となります。第三者による検証の過程を組み込むことも有用です。
対応③:迅速・丁寧な対応
改善命令や事業停止命令、許可の取消しといった重大な指導監督を受けないためには、常日頃から関係法令を遵守することはもとより、外国人技能実習機構(OTIT)からの実地検査時の指摘や文書指導(改善勧告・改善指導)等について迅速に改善を図ることが肝要です。
しかし、業務改善命令を受けた場合は、対応①②を踏まえて、業務改善報告書を提出することになります。改善命令に従わない場合や、改善措置を講じたとしても適切な措置であると認められない場合には、監理団体の許可の取消事由となる(技能実習法第37条第1項第4号)ほか、罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象になります(技能実習法第111条第3号)。
法令違反があった場合でも許可取消という重い処分を受けないように対応することが第一ですが、万が一、許可取消となった場合、行政訴訟で許可取消処分を争う余地がないか検証します。
当事務所における監理団体の法令違反対応の特徴
当事務所では法令違反等に発展してしまった場合において、事業継続やリスクを最小限に抑えるための法令違反対応に関するサポートを行っております。法令違反が発覚してしまった場合には、初動が非常に重要です。
焦って誤った判断をしてしまうことがないよう、専門家に頼っていただくことをおすすめします。
解決に向けた迅速な対応
弁護士は法令や規制に関する専門知識を持っていますが、必ずしも監理団体に関する規制を含む技能実習制度に精通しているとは限りません。当事務所では、技能実習制度に精通した弁護士が、違反内容の具体的な理解と適切な対応策の立案サポートができます。これにより、違反の性質や影響を正確に把握し、迅速かつ効果的な対応が可能となります。
当事務所では、対面相談に限定されることなく、各種オンラインツールを用いたご相談が可能です。
事業継続に向けた対応策のご提案
法令遵守に向けた内部手続の見直しや、関係者への指導、教育プログラムの実施などをご提案します。さらに、改善策の実行を監督し、その実効性を担保します。
適切な運営体制構築に向けたアドバイス
法令違反によるリスクを最小限に抑えるための戦略を提供します。これは、違反による評判の損失や法的な罰則を回避するために重要です。また、将来的な法令違反を防止するための内部統制の強化や、法令遵守プログラムの導入も行います。
監理団体の法令違反対応は
白﨑識隆法律事務所にご相談ください
監理団体に対する規制を含め技能実習制度、外国人労働者雇用問題に精通している弁護士は多くありません。法令遵守をし、健全な監理団体業務を行うため、是非当事務所にご相談ください。
なお、技能実習制度は育成就労制度に、監理団体は監理支援機関に変更する法改正が成立しています。当事務所は法改正にも対応していますので、新しい育成就労制度・監理支援機関に関する情報提供、ご相談も対応可能です。
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