育成就労制度では、外国人の就労状況を適正にすることで、不法就労や失踪を抑止することを目的に、技能実習制度より監理支援機関・育成就労実施者への規制が強化されました。外部監査人は資格要件が厳しく、出入国・労働法令に高度な知識を持つ者等に限られるため、事実上、弁護士・社会保険労務士・行政書士に絞られます。もっとも、これらの士業が監理支援機関自身と顧問契約を結んでいても、要件を満たし欠格事由がなければ外部監査人を兼任できます(構成員たる育成就労実施者の顧問は不可)。
また、本人意向による転籍に対応する義務が新設され、送出機関との契約適正化も求められます。違反時は許可取消し・改善命令・受入れ停止(取消の場合は、現に雇用する育成就労外国人、特定技能外国人、技人国外国人との契約を終了させた上、その先5年間受け入れ停止になります。)に加え、不正に対する刑事罰や企業名公表のリスクがあり、是正負担も重くなります。こうした予防法務の観点から、顧問弁護士を平時から確保する必要性が育成就労制度において一段と高まっています。
企業別サポート
Support
監理団体/監理支援機関向け顧問契約
育成就労制度で顧問弁護士の必要性が高まった理由
監理支援機関運営におけて発生しやすい法的リスク
例①:実施している監理事業への不備
育成就労の前身となる技能実習の現場においては、実際に次のような違法状態が発生しています。以下では、技能実習時代に生じた違反例を紹介します。
①労働基準法違反の例
- 技能実習生の時間外労働に対し、入国後一定の期間、1時間当たり500円の賃金しか支払っておらず、法定の率で計算した割増賃金を支払っていなかった。
- 食品加工業等を営む事業場で、技能実習生3名に対し、36協定で定める延長時間を超えて1か月最大109時間の時間外労働を行わせていた。さらに事業主は、労働基準監督署の指導を逃れるため労働時間の記録を改ざんし、実際より短い虚偽の労働時間記録を作成して、その虚偽の時間外労働時間数を賃金台帳に記入していた。
- ホテル業で働く技能実習生から、①休憩時間にも働いているが、その分の賃金が支払われていない、②早退した分の時間より多くの賃金が控除されていると労働基準監督署に申告があり、立入調査を行った結果、①休憩時間中に労働させたにもかかわらず、その分の賃金の一部が支払われていなかったこと、②早退時間にかかわらず一律半日の欠勤として賃金を控除していたことが判明した。
②労働安全衛生法違反の例
- 食料品製造業の事業場において、箱詰め作業中の技能実習生がフォークリフトと接触し負傷した労働災害が発生したため、立入調査を実施したところ、フォークリフトについて、接触防止措置が講じられておらず、また、無資格者が運転していた。
- 機械器具を製造する事業場に対して立入調査を実施したところ、技能実習生も使用するベルトサンダー(金属を研磨するための機械)について身体が巻き込まれるおそれがあるローラーの箇所に覆い等が設けられておらず、天井クレーンについても法定点検が実施されていなかった。また、玉掛用具として使用する繊維ベルトにも著しい損傷が認められた。
- 建設工事を営む事業場で、運転資格を有していない技能実習生が機体重量3トン以上の重機(トラクター・ショベル)の運転作業に従事していたところ、斜面を降りようとした際にバランスを崩して横転した重機の下敷きになり死亡する労働災害が発生した。
(いずれも厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」より)
これらの違法状態は、育成就労制度における監理支援機関に相当する監理団体が、実習実施責任者及び技能実習指導員からの報告、技能実習生の4分の1以上との面談、設備の確認・帳簿書類等の閲覧を含む3ヶ月に1回以上の定期監査、1ヶ月に1回以上の訪問指導を正しく行なっていれば、その段階で発見是正できたものです。しかし、実際の事例では、違法状態を認知した労働基準監督署から出入国管理機関・外国人技能実習機構へ通報されます(両機関には、「相互通報制度」があります。)。
育成就労制度においても、監理支援事業がもつ意味が、重要かが分かります。
例②:書類・帳簿の監理不足
育成就労実施者は、育成就労計画認定通知書、育成就労外国人名簿、育成就労外国人の履歴書、雇用契約書及び雇用条件通知書、賃金台帳、育成就労認定計画の履行状況に係る管理簿、育成就労日誌、実施状況報告書の控えを備え置かなければなりません。
監理団体は、定期監査等で、これらの帳簿の内容と聞き取り内容が整合しているかも精査して、嘘偽りなく適正に作成されているか確認しなければなりません。
また、監理支援機関も、①監理支援を行う育成就労実施者の管理簿として、監理支援を行う育成就労実施者の名簿(氏名又は名称、住所、代表者の氏名、法人番号、役員の氏名・役職・住所、育成就労を行わせる事業所の名称・所在地・選任されている育成就労責任者、育成就労責任者の氏名・役職、育成就労指導員の氏名・役職、生活相談員の氏名・役職、常勤職員数、事業所の常勤職員の総数、育成就労外国人の受入れ実績(国籍・地域別)、途中帰国した人数、行方不明となった人数)、育成就労責任者・育成就労指導員・生活相談員の就任承諾書及び誓約書並びに履歴書、監理支援機関と育成就労実施者の間の監理支援に係る契約書又はこれに代わる書類、②監理支援に係る育成就労外国人の管理簿として、育成就労外国人の名簿(氏名、国籍・地域、生年月日、性別、在留資格、在留期間、在留期間の満了日、在留カード番号、所属する育成就労実施者、外国人雇用状況届出の届出日、育成就労計画の認定番号・認定年月日・開始日・終了日、変更認定/変更届出に係る事項、従前の育成就労計画に係る事項等)、育成就労外国人の履歴書及び申告書、雇用契約書及び雇用条件書、③監理支援費に係る管理簿として、監理支援費管理簿、監理支援費管理簿の記載内容を裏付ける資料(徴収事実・算出根拠を示す書類(請求書、領収書の写し等)、支出事実を裏付ける書類)、④育成就労に係る雇用関係の成立のあっせんに係る管理簿、⑤監査報告書の写し、⑥入国前講習及び入国後講習の実施状況を記録した書類として、入国前講習実施記録、入国後講習実施記録、⑦訪問指導の内容を記録した書類として、訪問指導記録書、⑧育成就労外国人から受けた相談の内容及び当該相談への対応を記録した書類として、育成就労外国人からの相談対応記録書、⑨外部監査の結果を記録した書類として、外部監査報告書、外部監査報告書(同行監査)を備え置かなければなりません。内容虚偽の監査報告書を作成し、外国人育成就労機構に提出するといった違法行為により業務改善命令を受けたり、監理許可の取消処分がなされたりしています。
例③:育成就労外国人の失踪等のトラブル
育成就労外国人が失踪する原因は様々ですが、実習現場において労働関係法令遵守されていないといったいわゆるブラック状態であることが主たる失踪原因となります。したがって、定期監査等を法令にしたがって行うことは失踪を発生させないことの第一歩ですが、それでも時にして失踪は発生します。
監理支援機関が、育成就労実施機関から連絡を受けるなどして育成就労外国人の失踪を認知した場合(行方不明となった育成就労外国人の所在が判明して復帰の説得等をしている場合であっても、育成就労実施困難時届出書を提出しなければなりません。)、外国人育成就労機構に、事由が発生してから2週間以内に、育成就労実施困難時届出書を提出する必要があります。警察署への行方不明届の提出も必要です。また、監理支援機関には、育成就労の終了後に、帰国が円滑になされるように必要な措置を講ずる義務があります。その観点から、外国人育成就労機構への届出と並行して、可能な限り失踪した技能実習生の所在把握に努めることが重要です。
例④「転籍申出への対応不備」
育成就労外国人は、転籍(育成就労実施者の変更)を希望する場合、育成就労実施機関・監理支援機関・機構のいずれかに「育成就労実施者の変更希望の申出書」を提出できます。口頭の伝達は正式な申出と認められないため、口頭で伝えられた場合、案内が必要です。
育成就労実施機関は、申出書の内容を確認し、写しを本人に交付したうえで、監理支援機関へ通知します。転籍希望を理由に解雇など不利益な取扱いをすることは許されません。
通知を受けた監理支援機関は、事実関係を確認し、機構へ申出受理を届け出るとともに、本人と企業へ対応通知書を交付します。さらに、本人が育成就労を継続できるよう、転籍先の確保など必要な連絡調整・職業紹介等の支援を行わなければなりません。
注意すべきは、申出書の廃棄・受け取り拒否といった「握り潰し」は明確に禁止されている点です。妨害があれば、育成就労実施機関は育成就労計画の認定取消し、監理支援機関は許可の取消しや事業停止命令の対象となり得ます。いずれも改善命令違反には罰則(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)が科される可能性があり、取消し後5年間は新規の認定・許可も受けられません。
適法な運営を実現するためのポイント
帳簿等の適切な管理
前記のとおり、育成就労実施機関も監理支援機関も法令により求められる膨大な帳簿等を作成し、備え置かなければなりません。保存期間は、育成就労全体の終了から1年間になります。
監理支援対象が多くなり帳簿等の作成、整理が後回しになってしまうと、そのまま不備が生じたり、また、内容に問題があるものを作成してしまうきっかけとなってしまいます。
日頃から、監理支援機関は育成就労実施機関の監査を丁寧に行い、監理支援機関自体も外部監査人の監査や顧問弁護士・社会保険労務士の指導を受け、帳簿等の適切な管理に努める必要があります。
育成就労外国人との継続的なコミュニケーション
育成就労外国人とは、採用時から就労中を含め継続的なコミュニケーションをとることが肝要です。
雇用契約の締結時点では育成就労計画はまだ認定されていませんが、育成就労外国人になろうとする者は、入国後に従事することとなる就労内容を事前に把握しておく必要があります。そのため、実際に従事する業務の様子を撮影した動画を視聴させるなどして、予定される育成就労における業務の内容や、修得等しようとする技能等の内容を説明してください。
待遇を説明する際には、育成就労外国人等の言語に対応する雇用契約書及び雇用条件書を提示し、母国語で読み聞かせ等をした上で、確実にその内容を説明する必要があります。説明は、直接対面するか、テレビ電話装置等を利用したリアルタイムでのオンラインによる方法で行わなければならず、録画の視聴や電話のみによる説明は認められません。賃金については、総支給額のみを説明するのではなく、控除される税金・社会保険料や、食費・居住費等を徴収する場合にはその金額・目的・内容等、特に手取り支給額について、該当箇所を示しながら丁寧に説明してください。宿泊施設についても、写真や周辺環境の説明を用いるなどして十分に理解できるよう説明します。雇用契約書及び雇用条件書は、母国語が併記され、育成就労外国人が内容を十分に理解した上で署名していることが求められます。
育成就労外国人への指導等に際しては、文化や言語の理解力等の違いから、指導する側の意図に反して誤ったメッセージが伝わり、極めて深刻な結果となってしまうことがあります。こうしたことを避けるためにも、日頃から個々の育成就労外国人の状況に十分配慮し、「やさしい日本語」(難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮した分かりやすい日本語)を意識するなどして丁寧にコミュニケーションをとり、信頼関係の構築に努めることが必要です。
必要な指導等のつもりであったとしても、暴言や脅迫(例:指示に従わなければ帰国させる旨の発言等)、暴行(例:素手や道具による殴打、足蹴り等)は、いかなる理由であっても許されません。人権を著しく侵害する行為は暴言や暴行に限られず、大声で怒鳴る、侮辱する、各種ハラスメントなども含まれます。「国に帰れ」と発言する、母国語を話したことに対して「罰金を取る」と言う、土下座を指示する、コミュニケーションと称して不必要に体を触るといった言動も、行政処分等の理由になり得ます。
監理支援機関としては、育成就労実施者に対し、日頃から、相手の国の文化を理解する、分かりやすい言葉を使う、短い文章で話す、「です」「ます」を使って話す、結論から話す、ゆっくり話す、身振り等を交えて伝えるといったことを意識して接することの重要性を、しっかりと説明していく必要があります。
トラブル発生時に相談できる専門家の確保
トラブルが発生した場合に絶対にやってはいけないことは隠蔽です。当然のことですが、実際には隠蔽してしまって、育成就労実施機関も監理支援機関もそれを理由に行政処分を受ける事例が発生しています。
トラブルが発生した場合にすべきことは、外国人育成就労機構等の関係機関への届出、事案整理、再発防止の策定です。これらの対応を適切に行うには、第三者的視点をもった弁護士や社会保険労務士等の専門家の指導を受けることが不可欠です。
適切な対応を迅速に行うことで、トラブルをリカバーできることは多々あります。
当事務所における監理支援機関向け顧問契約の特徴
日常的な監理支援事業に関するアドバイス
監理支援事業を行なっていると、イレギュラーな事態が発生したり、育成就労実施機関や育成就労技外国人から問い合せを受け、その対応に追われます。
その対応に迷ったとき、あるいは自信を持てないとき、すぐに相談できる信頼できる専門家がいると、監理支援機関の職員も不安な状態で業務を進めるのではなく、自信をもって持って業務を進めることができ、業務効率が向上します。
入管法・育成就労法・労働法に精通
監理支援事業を行うためには入管法や育成就労法及びその関連法令、運用要領、ガイドライン等に従うことが基本になりますが、そもそも現場では労務提供がなされている以上、労働関係法令の遵守も不可欠です。しかも、労働関係法令が遵守されているかどうかは、育成就労外国人だけでなく、日本人労働者についても同じです。
監理支援機関において監理事業の実務に対応するだけでなく、これらの法令が遵守されているか、また、自社も法令を遵守できているかを確認していていうためには、入管法・育成就労法・労働法に精通した法律専門家である弁護士の支援が不可欠です。
トラブル発生時の迅速な対応
弁護士は常にトラブルと向き合う業務を行なっています。
トラブルが発生したとき、法令を確認しつつ迅速な対応をしていくことで、リスクを最小限にとどめることができます。
移行期間中(〜2030年頃)の技能実習・育成就労 二制度並走サポート
【監理支援機関向け】技能実習・育成就労「二制度並走期」の監理体制を、弁護士×社労士で支援
育成就労制度への移行により、2030年頃までは、在籍する技能実習生には技能実習法、新規受入れには育成就労法が適用される「二制度並走」が続きます。監理団体から監理支援機関への移行では、許可基準の厳格化、外部監査人の設置義務化、転籍(本人意向の転籍)への対応、帳簿・監査報告・各種届出の様式変更など、求められる実務が大きく変わります。当事務所は、技能実習法・育成就労法・入管法に精通した弁護士と社会保険労務士が連携し、許可申請・運営体制の構築から、外部監査人としての関与、機構・入管の指摘や改善命令への対応、許可取消リスクの回避まで一貫して支援します。新旧両制度の監理を、漏れなく適法に並走させます。
【受入れ企業向け】技能実習・育成就労「二制度並走期」の受入れを、弁護士×社労士でワンストップ支援
育成就労制度への移行により、2030年頃までは、在籍する技能実習生には技能実習法、新規受入れには育成就労法が適用される「二制度並走」が続きます。両制度では、雇用契約・雇用条件の説明義務、賃金からの控除や手取りの明示、転籍(本人意向の転籍)への対応、認定基準や届出の取扱いなどが異なり、対応を誤れば計画認定の取消しや不法就労助長のリスクにつながります。当事務所は、入管法・技能実習法・育成就労法に精通した弁護士と、賃金・社会保険・労務管理を担う社会保険労務士が連携し、採用前のリーガルチェック、適法な雇用・受入れ体制の構築、ビザ申請代行(申請取次資格)、入管・機構対応まで一貫してサポートします。
監理団体の適法な運営に向けては
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