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【2025年】外国人雇用に活用可能な助成金について解説

外国人雇用で利用できる補助金と助成金とは

補助金と助成金の違い

補助金と助成金は混同されることも少なくありませんが、所管轄・目的・支給金額等に細かな違いがあります。補助金と助成金は大まかには以下のように大別されます。

①補助金

管轄:経済産業省、自治体

目的:事業の強化。すなわち、新規事業の立ち上げ、技術開発、設備投資、地域活性化など、幅広い分野が対象となります。

支給額:数十万円から数千万円(1億円以上もあり)

支給要件:要件に合致すれば申請は可能。ただし、審査があり、採択率は3~5割くらいとなっています。

支給時期:計画実施後(申請から数ヶ月~1年以上後)

支援者:支援者の資格不問

②助成金

管轄:厚生労働省、自治体

目的:雇用・教育・労働環境の改善。すなわち、雇用促進、労働環境の改善、人材育成などを目的としています。

支給額:数万円から数百万円

支給要件:要件に合致すれば支給

支給時期:計画実施後(申請から数ヶ月~1.5年以上後)

支援者:社会保険労務士

外国人雇用で活用できる助成金

外国人雇用において活用できる助成金は、以下の5つが挙げられます。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

助成金の概要

外国人特有の事情に配慮した職場環境を整備し、外国人労働者の職場定着を促進することが、この助成金の主な目的です 。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/gaikokujin.html

支給要件の概要

雇用労務責任者の選任:事業所ごとに雇用労務責任者を選任し、全ての外国人労働者と3ヶ月ごとに1回以上の面談(テレビ電話による面談を含む)を行う必要があります。

就業規則等の社内規程の多言語化:「就業規則等の社内規程」の全てを多言語化し、計画期間中に雇用する全ての外国人労働者に周知する必要があります。  

加えて、以下の選択措置のうち、いずれか一つ以上を新たに導入し、実施する必要があります。

苦情・相談体制の整備:全ての外国人労働者の母国語又は当該外国人労働者が使用するその他の言語により、苦情又は相談に応じるための体制を新たに定め、周知し、継続的に運用する必要があります。

一時帰国のための休暇制度の整備:外国人労働者が一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇を取得できる制度を新たに定め、1年間に1回以上の連続した5日以上の有給休暇が取得できるようにする必要があります。

社内マニュアル・標識類等の多言語化:「社内マニュアルや標識類等」を多言語化し、計画期間中に雇用する全ての外国人労働者に周知する必要があります。

など

助成金額の概要

生産性要件を満たしていない場合は、支給対象経費の1/2(上限57万円)、満たしている場合は2/3(上限72万円)が支給されます。

支給対象経費の概要

  • 通訳費(外部機関等に委託するものに限る)
  • 翻訳機器導入費(雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要な翻訳機器の導入に限り、10万円を上限とする)
  • 翻訳料(社内マニュアル・標識類等を多言語で整備するのに要する経費を含む。外部委託に限る)
  • 弁護士、社会保険労務士等への委託料(外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限り、顧問料等は含まない)
  • 社内標識類の設置・改修費(外部機関等に委託をする多言語の標識類に限る)

雇用調整助成金

助成金の概要

雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化、その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用を維持するために行う休業、教育訓練、又は出向に要した費用を助成する制度です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_20200515.html

支給要件の概要

  • 売上高又は生産量の減少:最近1か月間の売上高又は生産量が、前年同月比で10%以上減少していること。
  • 雇用調整の実施:事業活動の縮小により、労働者に休業、教育訓練、又は出向を行わせていること。
  • 労使間の協定:雇用調整(休業、教育訓練、出向)の実施について、労働組合又は労働者の過半数を代表する者との間で協定を締結していること。
  • 雇用維持の努力:雇用調整期間中及びその後の一定期間、労働者を解雇していないこと。
  • 雇用保険の適用事業主であること。
  • その他、不正受給をしていないこと、労働関係法令に違反していないこと等

助成金額の概要

助成金額は、休業、教育訓練、出向のいずれを実施した場合でも、事業主が負担した費用(休業手当、賃金など)に一定の助成率を乗じた額となります。助成率や1人1日あたりの上限額は、企業の規模(中小企業か大企業か)、雇用調整の実施状況(解雇等の有無など)、そして、経済状況等によって変動します。教育訓練を実施した場合は、別途加算金が支給される場合があります 。例えば、中小企業の場合、解雇等を行わないなどの要件を満たせば、休業・教育訓練に対して高い助成率が適用されることがあります。累計の支給日数には上限があり、休業・教育訓練の場合は、原則として1年間に100日分、3年間に150日分が上限となります。出向の場合は、最長1年の出向期間中が助成対象となります。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

助成金の概要

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を、原則3ヶ月の有期雇用で試行的に雇い入れる事業主に対して、助成金を支給する制度です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html

支給要件の概要

  • 対象労働者の紹介元:ハローワーク又は職業紹介事業者の紹介により、対象労働者を雇い入れること。

対象労働者の要件

次のいずれかの要件を満たす者であること(主な例)

  • 紹介日時点で、就職の援助を希望しているが職業経験、技能、知識などが不足しているため、安定した職業に就くことが困難な者。
  • 紹介日時点で、学校卒業後3年以内で、かつ、卒業後、安定した職業に就いたことがない者(卒業後、パート・アルバイト等の不安定な職業に就いた者を含む)。
  • 紹介日時点で、離職期間が1年を超えている者。
  • 紹介日時点で、妊娠、出産、育児を理由として離職し、1年以上安定した職業に就いていない者。
  • 紹介日時点で、45歳以上であること。

雇用形態

  • 原則として3か月間の有期雇用(トライアル雇用)として雇い入れること。
  • 常用雇用への移行を前提としていること。

労働条件

  • 週の所定労働時間が30時間以上であること。
  • 社会保険(雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険)の適用事業所であり、適用対象となる労働者を雇い入れること。

事業主の要件

  • 雇用保険の適用事業主であること。
  • 過去に不正受給をしていないこと、労働関係法令に違反していないこと等

助成金額の概要

助成金額は、対象者1人につき月額4万円が原則として最長3ヶ月間支給されます。ただし、対象労働者が母子家庭の母又は父子家庭の父である場合は、月額5万円となります。また、対象者の1ヶ月間の就労日数に応じて支給額が増減する場合があります。

人材開発支援助成金(特定訓練コース)

助成金の概要

事業主が雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させる訓練等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000763528.pdf

支給要件の概要

事業主の要件
  • 雇用保険の適用事業所の事業主であること。
  • 職業能力開発推進者を選任していること。
  • 事業内職業能力開発計画を作成し、労働者に周知していること。
  • 訓練期間中も対象労働者に対して賃金を支払っていること。
  • その他、不正受給をしていないこと、労働関係法令に違反していないこと等
訓練の要件
  • 計画の提出:訓練開始日の原則1か月前までに「訓練計画」を管轄の労働局に提出し、認定を受けること。
  • 対象訓練:労働者の職業能力の開発・向上を目的としたOFF-JT(Off-the-Job Training:座学研修、eラーニングなど、通常の業務から離れて行う訓練)であること。
  • 訓練時間:1コースあたりの訓練時間が10時間以上であること。
  • カリキュラム:体系的・計画的な訓練カリキュラムであること。
  • 実施方法:外部の専門機関が実施する訓練や、自社で企画・実施する訓練(講師は外部・内部問わず)など、所定の要件を満たす方法で実施すること。

対象労働者の要件

  • 雇用保険の被保険者であること(原則)。
  • 訓練に参加した期間について、賃金が支払われていること。

助成金額の概要

助成金は、訓練にかかった経費の一部(経費助成)と、訓練期間中の賃金の一部(賃金助成)で構成されます 。助成率および助成額は、訓練の種類、企業の規模(中小企業か大企業か)、そして生産性要件を満たすかどうかによって異なります 。例えば、OFF-JTの賃金助成は、中小企業の場合1人1時間あたり760円または800円(生産性要件を満たす場合)などと定められています。経費助成の限度額は、訓練時間や訓練コースに応じて1人1コースあたり7万円から50万円までとなっています。1事業所が1年度に受給できる限度額は、特定訓練コースを含む場合は1,000万円、一般訓練コースのみの場合は500万円です

キャリアアップ助成金(正社員化支援・処遇改善支援)

 

助成金の概要

有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、これらの労働者を正社員化したり、賃金や労働時間などの処遇を改善したりする取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です 。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

支給要件の概要

  • 共通要件(正社員化支援・処遇改善支援に共通)
  • キャリアアップ計画の策定・提出
  • 対象労働者のキャリアアップに関する計画(キャリアアップ計画)を作成し、管轄の労働局に提出して認定を受けること。

事業主の要件

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること。
  • 労働基準法等の労働関係法令に違反していないこと。
  • キャリアアップ計画期間中に、対象労働者を離職させていないこと。
  • 不正受給をしていないこと等
  • 正社員化支援コースの主要要件

対象労働者

  • 有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者を、正社員に転換すること。
  • 転換前の雇用期間が6か月以上であること(原則)。

賃金要件

  • 正社員転換後6か月間の賃金が、転換前6か月間の賃金に比べて3%以上増額していること。
  • 就業規則等の整備
  • 正社員転換制度を就業規則または労働協約に規定し、労働者に周知していること。

処遇改善支援コースの主要要件

対象労働者

有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者。

賃金規定の改定
  • 賃金規定等を増額改定し、その規定を適用して賃金を引き上げること。
  • 対象労働者全員に適用される賃金規定等の増額改定であること。
  • 増額改定後の賃金が、改定前と比較して一定割合以上(例:基本給が3%以上)増加していること。

助成金額の概要

正社員化コースの場合、中小企業では有期雇用から正社員への転換で1人あたり80万円(2期に分けて支給)、無期雇用から正社員への転換で40万円(2期に分けて支給)などとなっています。大企業の場合はこれより低い金額設定となっています。処遇改善支援の各コースでも、賃金の増額率や制度の導入状況などに応じて、様々な金額が設定されています。

助成金の申請方法

これらの雇用関連助成金は、まず「計画の策定・提出」から始まります。これは、取り組む内容を事前に労働局等に認定してもらうステップです。次に、計画通りに「取り組みを実施」し、その記録を正確に残します。最後に、取り組み完了後に必要な書類を添えて「支給申請」を行います。最新情報の確認、事前の相談、そして書類の正確な管理が、スムーズな申請の鍵となります。

助成金を活用するうえでの注意点

助成金申請における重要な注意点は以下のとおりです。

「支給要件の厳格な確認」

各助成金には詳細な要件があり、一つでも満たさないと不支給となります。特に、過去の労働関係法令違反や解雇歴は多くの助成金で審査対象となるため、事前に確認が必要です。

「計画段階からの正確な書類整備」

助成金は後払いであり、計画通りに実施した「証拠」が求められます。賃金台帳、出勤簿、就業規則、訓練の記録など、日頃から整合性のある書類を正確に作成・保管しましょう。記載漏れや矛盾は、審査遅延や不支給に繋がります。

「申請期限の厳守」

多くの助成金には「実施後〇ヶ月以内」といった期限が設けられており、これを過ぎると申請できません。余裕を持った準備と、期限前の提出を心がけてください。

「不正受給の防止」

虚偽の申請や帳簿の改ざんは、支給金の全額返還に加え、違約金、事業者名の公表、一定期間の助成金受給停止など、重大なペナルティが課されます。

外国人雇用に関する助成金は専門家にご相談ください

外国人雇用を始める際に、助成金を活用したいと考える企業は多くありますが、申請に手間取ったり、書類に不備があったりなどうまくすすまないケースも散見されます。

助成金活用をご検討の方は、まず一度専門家にご相談ください。

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