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外国人雇用におけるよくあるトラブルとは?事例と対処法を弁護士が解説

外国人雇用におけるよくあるトラブル 

雇用契約書に関するトラブル 

労働関係法令および社会保険関係法令は、国籍にかかわらず適用されますので、外国人労働者に対しても、以下の項目について説明が必要です。 

  1. 労働条件(雇用契約期間、業務内容、就業時間、賃金など) 
  2. 賃金から控除されるもの(社会保険、雇用保険料、所得税、住民税など)
  3. 残業、休憩、休日、休暇などの考え方 
  4. 社会保険制度(健康保険、厚生年金保険) 
  5. 労働保険制度(雇用保険、労災保険) 
  6. 安全衛生(危険や健康障害の防止、健康診断など) 
  7. 福利厚生 など 

労働基準法15条では、使用者は労働契約の締結時に労働条件を明示することが義務付けられていますが(書面等で明示する必要があり、口頭ではこれを満たしたことにはなりません。)、その言語については特に規定がありません。つまり、法律上は日本語での労働条件通知書の交付で法的義務を果たしたことになります。しかし、日本では当然とされているルールが外国人労働者にとっては馴染みがなく十分に理解できていないことも想定されます。特に、賃金の「額面」と「手取り」の違いや、就業時間・残業については、認識の不一致によりトラブルになりがちです。上記はいずれも重要ものですが、①②③については、特に丁寧に説明しておく必要があります。 

そのため、以下の対応をおすすめします。 

・外国人労働者の日本語能力に応じて、母国語または理解できる言語での労働条件通知書を用意する 

・日本語版と母国語版の両方を準備し、両方に署名をもらう 

・通訳を介して労働条件を説明する 

やさしい日本語を使うなどの工夫をしながら、分かりやすく説明することが大切です。 

在留資格に関するトラブル 

在留資格に関するトラブルは、外国人にとっては不法就労、使用者にとっては不法就労助長罪という犯罪に直結します。また、使用者にとっては、今後の技能実習生(育成就労外国人)、特定技能外国人の採用が認められないことにつながるなど重大な影響がありますので、十分に注意が必要です。 

そのため、使用者としては、外国人の在留資格制度を十分に理解し、自社が求めている人材に担ってもらう仕事(業務)と、その仕事に就くことができる在留資格が何であるかを理解しておかなければなりません。外国人も在留資格制度を理解しておく必要がありますが、使用者がその理解を欠いたまま、外国人を雇用し、在留資格の不適合を招来することは御法度です。 

また、使用者が、不法就労助長を起こさないためには、雇入時の在留資格の有効性確認、在留カードの真正性確認だけでなく、雇用継続中のこれらの定期的な確認が必要となります。 

あってはならないことですが、雇用後、当該外国人が担う業務と保有する在留資格で認められる就労活動の不一致が判明した場合、直ちに就労を停止しなければなりません。その後は、在留資格を変更するか、担う業務を保有する在留資格に合わせる必要があります。しかし、それができない場合は、雇用契約を解消しなければなりません。 

欠勤・遅刻に関するトラブル 

もっぱら個人の特性によることになるものの、欠勤や遅刻に関しては、受け止め方について、国民性や文化的な背景に基づく価値観の違いがあります。 

したがって、欠勤や遅刻の連絡方法、いわゆる無断で欠勤や遅刻があった場合の指導については、日本人に対するのと同じ感覚ではなく、事前に丁寧に説明するとともに、違反があった場合は就業規則など根拠に基づいた対応が必要となります。 

解雇に関するトラブル 

外国人労働者を雇用している会社が解雇を検討する場合、基本的な解雇ルールに加えて、外国人特有の注意点があります。以下にポイントをまとめます。 

基本的な解雇ルールの遵守 

・解雇予告:少なくとも30日前に解雇予告が必要です。予告なしの場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です。 

・解雇制限:産前産後休業期間とその後30日間、業務上の傷病による休業期間とその後30日間は解雇できません。 

・解雇の有効性:客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる必要があります。 

外国人労働者特有の注意点 

・言語・文化的配慮:解雇の理由や手続きについて、やさしい日本語や母国語での説明を心がけ、十分な理解を得られるよう配慮してください。 

・在留資格への影響:解雇により在留資格の継続が困難になる可能性があるため、十分な猶予期間を設けることが望ましいです。 

・国籍による差別禁止:国籍を理由とする解雇は労働基準法第3条により禁止されています。 

解雇通知と手続き 

・書面での通知:解雇予告は口頭でも有効ですが、後のトラブル防止のため、やさしい日本語や可能であれば母国語での書面通知が望ましいです。 

・内容証明郵便:無断欠勤等で連絡が取れない場合は、内容証明郵便で通知することが適切です。 

・解雇証明書:請求があれば解雇理由等を記載した証明書を交付する義務があります。 

ハローワークへの届出 

・外国人雇用状況の届出:外国人労働者の退職時には、ハローワークへの届出が義務付けられています。外交、公用、特別永住者は除きます。 

・届出期限:退職の日の翌月10日までに届け出てください。 

・罰則:届出を怠ると30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。 

外国人労働者の解雇は、通常の解雇手続に加えて、言語・文化的配慮や在留資格への影響を考慮する必要があります。 

よくあるトラブルの原因と対処法 

コミュニケーション不足 

外国人労働者との間でトラブルが生じる原因として、言葉の壁が大きく立ちはだかります。雇用契約書の内容、勤務時間や休日、給与などの労働条件について、日本語での説明だけでは外国人労働者が完全に理解できないことがあります。また、在留資格の申請手続や更新、さらには解雇というデリケートな状況においては、文化的な背景の違いから、言葉のニュアンスが正確に伝わらないことも少なくありません。双方の意思疎通が不十分なまま手続きが進められたり、認識のずれが生じたりすることで、後になって「言った」「言わない」の争いや不満が噴出し、大きなトラブルに発展するケースが見受けられます。 

外国人労働者が孤立しないよう、日本人上司や同僚が、雇入時から積極的なコミュニケーションを心がけることが肝要です。 

制度理解の不足 

日本の複雑な労働関連法制度や社会保険制度に対する理解不足からも生じます。使用者側が、外国人労働者の在留資格の種類や活動範囲を正確に把握していない場合、本来認められていない業務に従事させてしまうなど、意図せず不法就労を助長してしまうリスクがあります。また、労働基準法に則った適切な労働条件の設定や、解雇に関する法的要件(解雇予告、解雇理由の明確化など)について知識が不足していると、後々労働者から訴えられるといった事態につながりかねません。外国人労働者側も、自身の権利や日本での生活ルール、相談窓口などに関する情報が不足しているため、不当な扱いを受けても適切に対応できないことがあります。 

こうしたことが原因でトラブルに発展しないようするために、雇入時の丁寧な説明は当然として、雇入後も必要に応じて丁寧な説明をしていくことで、外国人の理解度を確認しておく必要があります。 

トラブルが起こった場合の対処法 

外国人労働者とのトラブルは、言語・文化的配慮や在留資格への影響を考慮する必要があります。そのため、日本人労働者とのトラブルと同様の対応をしていては、トラブル拡大の可能性もありますので、外国人労働者雇用に関する専門家への相談も検討されることをお勧めします。 

外国人雇用を始める前に専門家に相談するメリット 

外国人雇用を始める前に専門家へ相談することで、日本の複雑な労働関連法規や在留資格制度に関する理解不足に起因するトラブルを未然に防げます 。不法就労助長などの法的リスクや、今後の技能実習生、特定技能外国人の採用に影響する重大な事態を回避できます 。雇用契約書の適切な作成、労働条件の明確な説明、在留資格の確認方法など、多岐にわたる専門知識に基づいたアドバイスを得ることで、安心して外国人雇用を進めることができる点が大きなメリットです 。 

外国人雇用は専門家にご相談ください 

外国人雇用企業は増え続けておりますが、外国人雇用に関する悩みは誰に相談するべきなのか、お悩みの方も少なくありません。

そんな時は、ぜひ白﨑識隆法律事務所までご相談ください。日常的なことに対するご相談から法的リスクについてまで、皆様のお困りごとの解決に向けてサポートさせていただきます。

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