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育成就労制度とは
2024年6月に改正法が可決・成立した経緯
2024年6月14日に成立した改正法により、従来の「技能実習制度」を抜本的に見直し、新たに「育成就労制度」を創設することが決定されました。この改正は、技能実習制度において長年指摘されてきた「制度目的(国際貢献)と実態(労働力確保)のかい離」や、転籍制限に起因する深刻な人権侵害等の課題を解消することを主眼としています。新制度では、日本が外国人から「選ばれる国」となるべく、未熟練労働者を3年間で「特定技能1号」水準まで育成し、長期的な人材確保を図ることを明確な目的として掲げ、一定の要件下での外国人意向の転籍を認めるなどの大幅な変更が行われました。育成就労制度は2027年4月1日に施行されます。
育成就労制度の目的と基本的な仕組み
育成就労では、「国際貢献」から「人材育成・確保」への目的転換、転籍の自由の限定的容認、そして監督・支援体制の強化を通じて、外国人が適正な労働環境の下でキャリアを形成できる制度への移行を目指しています。そのため、育成就労制度を従来の技能実習制度と比較すると、次のような違いがあります。
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項目 |
技能実習制度 |
育成就労制度 |
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制度目的 |
途上国への技能移転による国際貢献 |
特定産業分野における人材育成および人材確保 |
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在留期間 |
原則3年(1号・2号)、最長5年(3号) |
原則3年間(特定技能1号への移行を前提) |
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転籍の可否 |
原則不可(やむを得ない事情に限定) |
やむを得ない事情がある場合の他、一定要件下で本人意向の転籍を容認 |
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対象分野 |
技能実習の職種(細分化されている) |
育成就労産業分野(特定技能の分野と原則一致) |
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育成目標 |
技能等の修得 |
特定技能1号水準の技能および日本語能力の修得 |
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監督・監理 |
監理団体、外国人技能実習機構 |
監理支援機関(弁護士等の外部監査人必置)、外国人育成就労機構 |
企業が知っておくべき技能実習からの変更点
転籍が可能になる(1年以上勤務で本人意向による転籍を認める)
本人意向の転籍を実現するためには、同一業務区分内であること、1〜2年の範囲で設定される「転籍制限期間」を経過していること、技能及び日本語能力の試験に合格していることなどの要件を満たす必要があります。また、転籍に際しては、転籍先の受入れ機関が転籍元の機関に対し、初期費用の一部を補填する(いわゆる移籍金に相当する)仕組みが導入されます。転籍先には「優良」な基準が求められ、受け入れられる転籍者の数にも一定の割合制限が設けられています。
転籍制限期間
本人意向の転籍が制限される「転籍制限期間」については、以下のとおり運用されます。
期間の設定:分野ごとに1年から2年の範囲内で設定されます。制度としては1年とすることを目指していますが、当分の間は人材育成・確保の観点から分野別運用方針により期間が定められます(例:介護、工業製品製造業、建設業は2年、ビルクリーニング、宿泊は1年など)。
実施者による短縮:分野別運用方針で1年を超える期間が設定されている場合でも、受入れ機関(育成就労実施者)の判断で、自主的に1年に短くすることが可能です。
待遇向上の義務:転籍制限期間を1年超に設定した機関は、就労開始から1年を経過した後、転籍制限を理由とした昇給やその他の待遇向上措置を講じなければなりません。
技能及び日本語能力の試験要件
転籍を希望する外国人は、以下の試験に合格していることが求められます。
技能水準:技能検定試験基礎級、又はこれに相当する育成就労評価試験初級への合格が必要です。
日本語能力:日本語教育の参照枠A1相当(日本語能力試験N5等)から、特定技能1号移行時に必要となる水準までの範囲内で、各産業分野が設定する試験への合格が求められます。
初期費用(移籍金)の補填の仕組み
本人意向の転籍に伴い、転籍後の機関(転籍先)が転籍前の機関(転籍元)に対して支払う「初期費用の補填」については、以下のルールが適用されます。
補填の対象:外国人の取次ぎ及び育成に要した費用が対象となります。
金額の算出方法:主務大臣が告示で定める額に対し、育成就労外国人が転籍元に在籍していた期間に応じた按分率を乗じて算出されます。
支払主体:転籍先の育成就労実施者が、転籍元の実施者に対して直接支払うことになります。
その他
育成就労外国人から転籍意向が示された場合、その申し出先がいずれであっても、育成就労実施者、監理支援機関、外国人育成就労に共有される仕組みとなっており、転籍意向が握り潰されないようになっています。
日本語能力要件の追加(入国前N5相当、1年後A2相当)
入国時および就労開始前の要件
育成就労外国人が日本に入国する時点では、特定の技能や日本語能力の合格要件は設けられていません。しかし、日本での就労を開始する前までには、以下のいずれかを満たす必要があります。なお、介護、運輸では要件が上乗せされています。
試験合格:日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格していること。
講習受講:試験に合格していない場合、認定日本語教育機関による「就労」課程のA1相当の講習を320時間(入国前講習で160時間、入国後講習で160時間も可)以上受講すること。
なお、事前にA1相当の試験に合格している場合は、入国前講習及び入国後講習での日本語講習は220時間に緩和されますが、日本語の科目を履修すること自体は求められます。この場合の講習は認定日本語教育機関によるものでなくても差し支えないとされています。
不法就労助長罪の厳罰化(懲役3年→5年、罰金300万→500万円)
2024年6月に成立した改正入管法により、不法就労助長罪の法定刑が以下の通り引き上げられます。
改正前:3年以下の拘禁刑(懲役・禁錮)若しくは300万円以下の罰金、又はこれの併科。
改正後:5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれの併科。
この改正は、不法就労を助長する悪質な雇用主やブローカーに対する抑止力を高めることを目的としています。不法就労助長罪の厳罰化は、人権侵害や不法就労を根本から断つための強力な法的措置です。雇用主は「知らなかった」では済まされない重い責任を負っており、在留カードによる適法な就労資格の確認を怠った場合には、刑事罰だけでなく、育成就労、特定技能の欠格事由となることに加え、事業継続に不可欠な各種許可の喪失という甚大なリスクを負うことになります。
送出機関手数料の上限規制(月給の2ヶ月分まで)
育成就労制度における外国人の費用負担に関する具体的なルールは以下のとおりです。
手数料の上限:育成就労の対象となろうとする外国人が送出機関に支払う費用の上限は、日本の育成就労実施者から支払われる月給(所定内月額)の2ヶ月分までと定められます。
超過分の負担主体:上記の上限を超える費用が必要な場合には、その超過分は育成就労実施者(受入れ企業)又は監理支援機関が負担しなければなりません。
育成就労計画の認定要件:受入れ機関が作成する育成就労計画の認定基準には、「外国人が送出機関に支払った費用額等が基準に適合していること」が含まれており、適切な費用負担が制度利用の前提となります(超過する場合、計画は認定されません。)。育成就労外国人が送出機関に支払った費用の確認に当たっては、送出機関が育成就労外国人に発行した領収書等を確認するなどして、当該費用が育成就労計画に記載された報酬の月額の2か月分を超過していないことを確実に確認する必要があります。
移行スケジュールと現在の技能実習生への影響
技能実習からの移行緩和措置
現在日本に在留している、あるいは施行直前に来日する技能実習生は、原則として現在の認定計画に基づき実習を継続することが可能です。また、激変緩和措置として、技能実習2号を「良好に修了」した者については、育成就労制度の運用開始後であっても「当分の間」は、従前の職種と関連性がある業務への特定技能1号への移行に際し、技能試験及び日本語能力試験が免除される仕組みが維持されます。
現在の技能実習生への影響と継続ルール
施行日以降における技能実習生の扱いは、その時点での在留状況等に応じて以下のとおりとなります。
実習の継続:2027年4月1日時点で既に来日している技能実習生、及び同日までに計画認定申請(現実的には、2027年2月までに申請を行うことが推奨されています。)を行い2027年6月30日までに実習を開始する者は、引き続き現在の認定計画に基づき技能実習を継続できます。
技能実習2号への移行:施行日時点で「技能実習1号」として在留している者は、施行後も「技能実習2号」へ移行することが可能です。
技能実習3号への移行制限:施行後に「技能実習3号」へ進むことができるのは、2027年4月1日時点で「技能実習2号」として既に1年以上実習を行っている者に限定されます。
計画の認定:育成就労制度では3年間の計画を一度に作成しますが、移行期間中の技能実習生については引き続き各段階(1号・2号・3号)ごとの計画認定が必要となります。
育成就労法施行日前申請のスケジュール
監理支援機関許可申請:2026年4月15日~
育成就労計画申請:2026年9月1日~
育成就労外国人候補者との面接等:2026年7月頃~
まず企業が着手するべきこと
現在の技能実習体制の法的チェックを早期に実施する
受入れ機関(育成就労実施者)としての適格性チェック
育成就労制度では、受入れ機関(育成就労実施者)に求められる要件が技能実習制度よりも厳格化されており、以下の項目を網羅的にチェックする必要があります。
行方不明者の発生状況:過去1年以内に、実施者の責めに帰すべき事由による外国人の行方不明者が発生していないこと。
不当な離職の有無:過去1年以内に、育成就労外国人が従事する業務と同種の業務に従事していた労働者(日本人を含む)を(自己都合等を除き)離職させていないこと。
法令遵守と社会保険:労働、社会保険、及び租税に関する法令を完全に遵守していること。
不適切な利益供与の禁止:送出機関等から、社会通念上相当な範囲を超えた金銭や物品、供応接待を受けていないこと。
説明義務の履行:雇用契約締結時に、労働条件等の待遇について本人へ直接又はオンラインで説明を行うこと。
協議会への加入:受入れ対象分野ごとの協議会への加入が必須となります。
監理支援機関の選定・外部監査人の確保を2026年前半までに完了させる
外部監査人は、職務を公正かつ適正に遂行できる能力として、以下のいずれかに該当する必要があります。
弁護士(又は弁護士法人)
社会保険労務士(又は社会保険労務士法人)、,
行政書士(又は行政書士法人)
育成就労に関する知見を有する者(出入国・労働法令に高度な知識・経験を有する大学教授や、相当の実績がある講習実施機関など)
この内、④については、育成就労運用要領で定められた要件からして、現実的ではありません。現実的には、①~③の士業になりますが、育成就労制度その他特定技能や外国人雇用法務に精通している士業はそう多くありません。また、1人・1法人が担当できる監理支援機関も限界がありますので、監理支援機関許可申請をする場合は、早期に適任の士業を確保する必要があります。
なお、監理支援機関の顧問士業が外部監査人を兼ねることは差し支えありません。
転籍リスクを踏まえた待遇・労働環境の見直し
報酬体系の適正化と向上
日本人との同等報酬:育成就労外国人に対する報酬額は、日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上でなければなりません。
技能修得に応じた昇給:育成就労2年目、3年目の賃金を前年より上げるなど、技能の修得度に応じた賃金の格付けを行い、外国人の意欲向上を図ることが必要です。
転籍制限期間に応じた待遇向上:分野別運用方針により転籍制限期間が1年を超えるよう設定されている場合、1年経過後における昇給などの待遇向上を図ることが義務付けられています。
良好な労働・生活環境の整備
宿泊施設の質の確保:寝室の面積(1人当たり4.5㎡以上)やプライバシーの確保、衛生状態の維持など、適切な宿泊施設を提供することが基準となっています。
適切な労働時間の管理:違法な時間外労働をさせないことはもちろん、36協定の遵守や、時間外労働が発生する場合でも指導可能な体制を構築する必要があります。
メンタルヘルスと相談体制:外国人はストレスを受けやすい環境に置かれるため、定期的な面談を通じてメンタルヘルス面の問題を確認し、適切に対応することが求められます。
コミュニケーションと信頼関係の構築
丁寧な説明: 雇用契約や待遇(手取り額や控除項目)について、外国人の母国語で詳細かつ丁寧に説明し、理解と合意を得ることが、ミスマッチによる転籍を防ぐために重要です。
「やさしい日本語」の活用:指導の際、相手に配慮した分かりやすい日本語(やさしい日本語)を意識し、円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築に努める必要があります。
キャリアアップの支援
日本語学習の機会提供:育成就労実施者は、外国人が特定技能1号水準(A2相当)の日本語能力を修得できるよう、学習費用の負担や環境整備などの措置を講じなければなりません。
試験受験の妨害禁止:転籍要件となる技能試験や日本語試験の受験を不当に制限することは、認定の取消事由になり得るだけでなく、かえって「やむを得ない事情」による転籍を認めさせる要因となります。
このように、育成就労制度下では、外国人を単なる労働力としてではなく、「選ばれる職場」となるよう、ハード・ソフト両面での環境整備を進めることが転籍リスクの軽減につながります。
育成就労制度の活用を計画している企業はまず専門家にご相談ください
- ビザ手続きも代行
- 企業法務の知見
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