新着情報
News
2026年の入管法改正について弁護士が解説
今回の入管法改正の概要
2026年5月29日、出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律が成立しました。改正の柱は、短期滞在者を対象とする電子渡航認証制度(JESTA)の創設と、在留資格の変更許可・在留期間の更新許可・永住許可に係る手数料(在留許可手数料)の大幅な引上げの二つです。
このうち、外国人材を受け入れる企業に継続的な影響を与えるのは、後者の手数料の改正です。手数料は外国人本人が負担するのが原則ですが、金額が大きくなれば「会社で負担してもらえないか」という相談が現場から上がることは避けられず、採用競争力や定着率にも直結する経営課題となります。
手数料の値上げに関する詳細
改正法は、入管法上の手数料の「上限額」を次のとおり引き上げました。
|
手続の種類 |
現行の上限額 |
現行の実際の額(政令) |
改正後の上限額 |
|
在留資格の変更許可 |
1万円 |
6,000円(窓口) |
10万円 |
|
在留期間の更新許可 |
1万円 |
6,000円(窓口) |
10万円 |
|
永住許可 |
1万円 |
1万円 |
30万円 |
※「改正後」は法律上の上限額です。実際に納付する額は、今後定められる政令によります。
注意が必要なのは、これらがあくまで法律上の上限額であり、実際に納付する金額は引き続き政令に委任され、しかも「在留期間に応じて定める」とされている点です。直ちに10万円・30万円になるわけではありませんが、上限が10倍から30倍に引き上げられた以上、相応の引上げは前提に考えておくべきです。
また、手数料の額を定めるに当たって勘案する要素も明確化されました。手数料が単なる事務コストの回収にとどまらず、共生施策の財源としての性格を持つことが明確にされたといえます。あわせて減額・免除の仕組みも設けられましたが、永住許可について減免の対象となるのは日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子等に限られ、就労系の在留資格から永住を目指す外国人従業員本人は原則として対象外です。改正の要点は次のとおりです。
|
論点 |
改正法の内容 |
|
具体的な金額の定め方 |
政令に委任。在留期間に応じて定める |
|
金額を定める際の勘案要素 |
実費/在留管理・在留支援に要する費用/諸外国における同種の手数料の額 |
|
減額・免除 |
経済的困難その他特別の理由がある者。ただし永住許可は日本人・永住者・特別永住者の配偶者又は子等に限る |
|
施行期日(手数料関係) |
2027年(令和9年)3月31日までの間において政令で定める日 |
手数料の値上げが起こる背景
政府は改正の背景として、令和7年末時点の在留外国人数が過去最高の約413万人を記録したことを挙げています。在留外国人が増加すれば、在留審査事務の負担のみならず、日本語教育、生活支援、相談体制の整備といった共生施策のコストも増大します。
現行法では変更・更新・永住のいずれも上限額が1万円であり、これらの施策を強化・拡充していくには十分でない、というのが政府の問題意識です。諸外国の同種手数料の額を勘案要素としたことからも、日本の手数料が国際的に低い水準にあることが意識されていることがうかがえます。今回の改正は単発の値上げではなく、今後も政令で機動的に改定されうる建て付けであり、企業としては継続的なコストとして見込んでおく必要があります。
企業が知っておくべき注意点
値上げによる外国人従業員の負担増加
最も直接的な影響を受けるのは外国人従業員本人です。就労系の在留資格の在留期間は1年・3年・5年が多く、満了のたびに更新許可申請が必要となります。手数料が現在の6,000円から大きく引き上げられれば、数年ごとに数万円単位の出費が発生することになります。
見落とされがちなのが家族の分です。「家族滞在」で配偶者や子を帯同している場合、更新のたびに家族全員分の手数料が必要となります。上限額をそのまま当てはめた場合の負担イメージは次のとおりです。
|
世帯構成 |
在留期間の更新(現行6,000円) |
同(上限10万円を当てはめた場合) |
永住許可(現行1万円) |
同(上限30万円を当てはめた場合) |
|
本人のみ |
6,000円 |
10万円 |
1万円 |
30万円 |
|
本人+配偶者 |
1万2,000円 |
20万円 |
2万円 |
60万円 |
|
本人+配偶者+子1人 |
1万8,000円 |
30万円 |
3万円 |
90万円 |
※上限額をそのまま当てはめた場合の試算であり、実際の額は政令によります。更新手数料は在留期間ごとに繰り返し発生する点にも注意が必要です。
外国人従業員にとって日本での就労は仕送りや将来の資産形成と結びついています。手取り額に対する手数料の比重が大きくなれば、日本で働き続けること自体の魅力が低下し、他国への転職や帰国を検討する動機になりかねません。人材獲得競争が国際化している中で、これは受入れ企業にとって現実的な離職リスクです。
企業側でのサポートに係る費用
そこで、手数料を会社が負担・補助する運用を検討する企業も増えると考えられます。定着策として一定の合理性がありますが、次の点に留意が必要です。
第一に、費用負担のルールを明文化することです。誰の、どの申請について、いくらまで、どのような手続で会社が負担するのかを就業規則や規程で定めておかないと、従業員間の不公平感や後日の紛争の原因となります。特に、変更許可・更新許可・永住許可のいずれを対象とするのかは明示すべきです。永住許可は本来的に個人の身分に関わるものであり、業務との関連性の説明が難しい場面もあります。
第二に、税務上の取扱いです。会社が負担した費用が給与所得として課税されるか否かは支出の性質により判断が分かれ得ますので、顧問税理士とも事前に確認しておくことが望まれます。
第三に、「一定期間内に退職した場合は返還させる」という合意の有効性です。この種の合意は、労働基準法16条が禁止する賠償予定に当たり無効と判断されるリスクがあります。返還条項を設ける場合は、貸付契約としての実質を備えているか、金額や期間が合理的かなど慎重な設計が不可欠であり、安易なひな形の流用はかえって紛争の火種となります。
第四に、施行前後の申請計画です。施行前に更新時期を迎える従業員については、従前の手数料で手続を済ませられる可能性があります。在留期限の一覧を作成し、施行時期の動向を見ながら申請時期を検討することが、実務上のコスト管理につながります。
これらの検討は、費用を出すか否かという単発の判断にとどまりません。規程の新設・改定は就業規則の変更手続や周知の問題を伴い、負担額の設計は賃金制度全体とのバランスにも影響します。当事務所には、外国人雇用法務・労務に精通した弁護士と社会保険労務士が在籍しており、法的リスクの検討から、就業規則・賃金規程への落とし込み、社会保険・労働保険の適正な処理までを一体で対応することが可能です。
外国人従業員の定着のためにできること
手数料の引上げは、外国人従業員にとって「日本で働き続けるコスト」の上昇を意味します。これを乗り越えて定着してもらうには、コストを上回る将来像を示すことが必要です。
具体的なキャリアステップ・給与テーブルの開示
外国人従業員が長期就労を決断する上で重要なのは、この会社で働き続ければ何年後にどのポジションで、いくらの収入を得られるのかが見えることです。日本企業では昇進・昇給の基準が明文化されていないことが少なくありませんが、日本の雇用慣行に馴染みのない外国人にとっては大きな不安要素となります。
職務要件、必要な資格や日本語能力の水準、対応する等級と給与レンジを可視化し、母国語又はやさしい日本語で説明することが有効です。特に、育成就労や特定技能1号から特定技能2号、さらには技術・人文知識・国際業務等への移行を見据えたキャリアパスを提示できれば、在留資格の安定と収入の向上が結びついた将来像を描くことができます。
もっとも、等級や給与レンジの設計は、日本人従業員を含む賃金制度全体の見直しを伴います。当事務所では、社会保険労務士の視点から、人事評価制度・賃金テーブルの構築、就業規則や諸規程の整備、労働時間管理体制の見直しまでをコンサルティングとして支援しており、外国人材の定着と労務コンプライアンスを同時に実現する制度設計をご提案します。
信頼できる専門家の紹介・提携
在留手続や永住申請について、外国人従業員が独力で正確な情報にたどり着くことは容易ではありません。SNSや同国人コミュニティでは誤った情報も流通しており、誤った申請により不許可となれば、本人の失望は大きく、離職の引き金にもなります。
入管業務に精通した専門家と提携し、従業員がいつでも相談できる窓口を用意しておくことは、有効な定着策です。手数料が引き上げられる以上、一度の申請の重みは従来より格段に大きくなり、確実に許可を得るためのサポート体制の価値は今後ますます高まります。当事務所には、外国人雇用法務・労務に精通した弁護士と社会保険労務士が在籍しており、在留手続や永住申請に関する従業員向けの相談対応から、企業側の労務管理の整備までをワンストップでお引き受けできます。
永住を目指したライフプラン設計への寄り添い
永住許可の手数料上限が30万円とされたことは、逆にいえば、永住許可がそれだけの価値を持つ資格として位置づけられているということでもあります。永住許可を得られれば在留期間の更新が不要となり、更新のたびの手数料負担からも解放されます。
永住許可には、原則として引き続き10年以上日本に在留し、そのうち就労資格等をもって5年以上在留していること、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、公的義務(納税、社会保険料の納付、各種届出義務等)を適正に履行していることなどの要件があります。近年は特に、住民税や社会保険料の納付状況、届出義務の履行状況が厳格に確認される傾向にあります。
企業としては、給与からの控除・納付が適正に行われているか、住所変更や所属機関に関する届出が漏れていないかを日常の労務管理の中で確認しておくことが重要です。数年後の永住申請の可否は、今日の労務管理の積み重ねによって決まります。
専門家に相談するメリット
雇用体制を適法化し、許可可能性を上げられる
変更許可・更新許可の審査では、外国人本人の要件だけでなく、受入れ機関である企業側の適法性・安定性も実質的に考慮されます。労働関係法令の違反、社会保険の未加入、不適切な業務内容の割当てなどが判明すれば、許可が得られないおそれがあります。
手数料が高額化すれば、不許可となった場合の経済的・心理的損失も大きくなります。事前に雇用契約書、労働条件通知書、業務内容、賃金水準、社会保険の加入状況などを点検し、適法な体制を整えておくことが、許可可能性を高める最も確実な方法です。
この点検は、在留資格該当性という入管法の観点と、労働時間・賃金・社会保険という労務の観点の双方から行う必要があります。当事務所では、弁護士と社会保険労務士が連携し、両面から一度に点検を行うことで、部分的な対応にとどまらない実効性のある体制整備を実現します。
1度の申請で長い許可年数の実現が可能
今回の改正では、具体的な手数料の額は「在留期間に応じて定める」とされています。長期の在留期間の許可を得ることができれば申請回数自体が減り、生涯にわたる手数料の総額を抑えられる可能性があります。
在留期間の決定は、業務の安定性・継続性、報酬額、企業のカテゴリー区分、届出義務の履行状況など複数の事情を総合考慮して判断されます。申請書類の作り方一つで1年の許可にとどまるか3年・5年の許可を得られるかが変わることは実務上しばしば経験するところであり、手数料の高額化により、この差が経済的にも明確に表れることになります。
他企業との差別化になり、離職リスクを下げられる
手数料の引上げはすべての企業の外国人従業員に等しく降りかかります。だからこそ、これにどう向き合うかが企業間の差になります。費用負担制度の整備、キャリアパスの提示、専門家窓口の設置、永住取得の支援といった施策を早期に打ち出す企業は、「この会社なら長く働ける」という信頼を獲得できます。特に、育成就労制度への移行により一定の要件の下で本人意向による転籍が認められることを踏まえると、「選ばれる職場」であり続けるための取組みは、今後の外国人雇用における必須の経営課題といえます。
<H2>法改正に伴うお悩みは、専門家までご相談ください
2026年5月29日に成立した改正入管法により、在留資格の変更許可・在留期間の更新許可の手数料の上限額は10万円に、永住許可の手数料の上限額は30万円に引き上げられました。施行は2027年3月31日までの間の政令で定める日とされ、具体的な金額も今後政令で定められます。
企業に求められるのは、①在留期限と申請予定時期の一覧化、②費用負担ルールの整備(就業規則・規程の見直し)、③許可可能性と在留期間を最大化するための労務体制の点検の三点であり、いずれも施行前に着手しておくべき事項です。
当事務所は、外国人雇用・労務に特化した法律事務所として、外国人雇用法務・労務に精通した弁護士と社会保険労務士が在籍し、企業の受入れ体制の構築から在留手続、入管対応、就業規則・賃金制度の設計、労務トラブルの解決までを一貫してサポートしています。今回の法改正への対応、費用負担規程の整備、従業員の定着策の設計など、お悩みの際はお気軽にご相談ください。
- ビザ手続きも代行
- 企業法務の知見
- 不法就労
トラブル対応