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特定技能外国人を受け入れる場合の家賃負担はどうするべきか?法的な注意点を解説

なぜ外国人雇用で家賃・住居が問題になるのか

外国人雇用企業からの相談

外国人材を受け入れる企業から、「社宅の家賃はいくらまで徴収してよいのか」、「敷金・礼金は誰が払うのか」、「給与から天引きしてよいのか」といったご相談を多くいただきます。住居は外国人材の生活の基盤であり、ルールを誤ると、計画認定や在留諸申請で問題となるだけでなく、未払賃金の請求や失踪・転籍の原因にもなりかねません。

外国人が自分で住居を確保するのは今なお難しい

法務省の委託調査「外国人住民調査報告書」(2017年)によれば、過去5年間に日本で住む家を探した外国人2,044人のうち、39.3%が「外国人であることを理由に入居を断られた」、41.2%が「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」と回答し、26.8%が「外国人お断り」と書かれた物件を見てあきらめたと回答しています。より新しい出入国在留管理庁「令和7年度在留外国人に対する基礎調査」(回答者8,874人)でも、差別的な扱いを受けた生活の場面として「家を探すとき」(19.4%)が最も多く、「仕事をしているとき」(17.5%)や「仕事を探すとき」(13.2%)を上回っています。
背景には、連帯保証人を求める日本の賃貸慣行、日本語での契約手続、敷金・礼金・更新料といった日本特有の費用体系、家主側の言葉や生活習慣の違いへの不安があります。在日韓国人であることを主な理由とする賃貸借契約の締結拒絶について家主の損害賠償責任を認めた裁判例(大阪地判平成5年6月18日判時1468号122頁)もありますが、入居拒否の実態は解消されていません。2025年10月施行の改正住宅セーフティネット法により、外国人を含む住宅確保要配慮者の入居を支える認定家賃債務保証業者制度や居住サポート住宅が設けられましたが、来日直後の外国人が自力で住まいを確保するのは依然として困難です。

3つの制度とも受入れ企業側に住居確保の責任がある

そのため、技能実習、育成就労、特定技能1号のいずれの制度でも、受入れ企業側が住居の確保に責任を負う仕組みになっています。技能実習・育成就労では、実習実施者(育成就労実施者)又は監理団体(監理支援機関)が「適切な宿泊施設を確保していること」が計画認定の基準とされています(技能実習法施行規則14条、育成就労法施行規則18条)。特定技能1号では、「適切な住居の確保に係る支援」が義務的支援の一つとされ(特定技能基準省令3条1項1号ハ)、1号特定技能外国人支援計画に記載して実施しなければなりません。
もっとも、求められる内容は制度ごとに異なります。

3制度の住居ルールの違い(比較表)

項目

技能実習

育成就労

特定技能1号

企業側の義務

実習実施者又は監理団体が宿泊施設を確保

育成就労実施者又は監理支援機関が宿泊施設を確保

所属機関が住居確保を支援(登録支援機関へ委託可)

広さの基準

寝室1人4.5㎡以上

寝室1人4.5㎡以上

居室1人7.5㎡以上(技能実習からの継続居住は寝室4.5㎡以上)

借上げ住宅の家賃上限

借上げ費用÷入居人数以内

同左(損害保険・火災保険料を含む)

同左

自社所有社宅の家賃

建設費・耐用年数・入居人数等から合理的な額

左記に加え築年数・近隣相場も勘案

建設費・耐用年数・入居人数等から合理的な額

本人に負担させられない費用(借上げ時)

敷金・礼金・保証金・仲介手数料等

左記に加え更新料・保証委託料

左記に加え更新手数料・途中解約金等

本人が自ら賃借する場合

個室+家賃20%以上の住宅手当等で優良要件の加点

同左

企業が連帯保証人又は保証業者確保+緊急連絡先。保証料は企業負担、敷金・礼金は原則本人負担

※各制度の運用要領(令和8年版)及び「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」に基づき作成

住居確保のルールの基本

部屋の広さに関する基準

技能実習・育成就労では、寝室について、床の間・押入等を除き1人当たり4.5㎡以上(約3畳)を確保する必要があり、申請時に提出する見取り図で面積の算出根拠を明示しなければなりません。このほか、施錠できる私有物収納設備、採光、冷暖房設備、消火設備等の要件もあります。

特定技能1号では、居室の広さは1人当たり7.5㎡以上(約4.5畳)が求められ、複数人で住む場合は居室全体の面積を人数で除して判断します。ただし、技能実習2号等を修了した方が同じ社宅に引き続き住む場合は、寝室4.5㎡以上で足りるとされています。

なお、寮が労働基準法上の「事業の附属寄宿舎」に当たる場合は、寄宿舎規則の作成・届出(同法95条)や事業附属寄宿舎規程の基準にも従う必要があります。

社宅・借上げ住宅を提供する場合の家賃の上限

企業が所有する社宅や、企業が賃借人となった借上げ住宅を提供する場合、外国人から徴収できる居住費には上限があります。3制度に共通して、借上げ住宅は「借上げに要する費用を入居人数で除した額以内」、自己所有の社宅は「建設・改築費用、耐用年数、入居人数等を勘案した合理的な額」とされています。企業が社宅の提供で利益を得ることは認められません。

育成就労ではこの考え方がより具体化され、自己所有物件については築年数や近隣の類似物件の家賃相場も勘案すること、借上げ物件については損害保険・火災保険料を含む一方で更新料や保証委託料は含まないことが明記されました。また、技能実習・育成就労では、役員や同居の親族が所有する物件を借り上げる場合、自己所有物件とみなされる点にも注意が必要です。

敷金・礼金・保証料は誰が負担するか

企業が借り上げる場合、敷金・礼金・保証金・仲介手数料等は居住費に含められないため、外国人に負担させることはできません。

一方、特定技能1号で外国人本人が賃借人となる場合は、敷金・礼金等は原則として本人負担とされています(企業が任意に負担することは可能です)。ただし、家賃債務保証業者を利用する場合の保証料は、所属機関等が負担する必要があります。

家賃・水道光熱費の負担はどう決めるべきか

社宅を提供する場合

水道光熱費は、実際に要した費用を同居者(企業関係者やその家族を含みます)の人数で除した額以内でなければなりません。特定技能では、家具・家電などの備品の使用料や火災保険料等を徴収する場合も、実費の範囲内で耐用年数や人数を勘案した合理的な額であることが必要です。

いずれの費用も、外国人が提供される内容と金額を十分に理解した上で合意していることが前提です。母国語併記の雇用条件書や「報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書」で内訳を明示しておきましょう。育成就労では、光熱費の値上がりで負担額を変更する際には事前に説明して理解を得ることが「必要」とされ、本人から相談があれば請求書等を示して説明することも求められています。

本人が住居を借りる場合

特定技能1号では、本人の希望に応じて、①本人が賃借人となる場合の物件探し・同行の支援、②企業が借り上げて提供、③自社所有の社宅の提供、のいずれかの方法で支援します。①で連帯保証人が必要な場合は、企業が連帯保証人となるか、家賃債務保証業者を確保した上で企業が緊急連絡先となる必要があります。転居時や、雇用契約の終了後に次の受入れ先が決まるまでの間にも支援が求められる点に注意してください。

技能実習・育成就労では企業側が宿泊施設を確保するのが原則ですが、本人が自ら住居を選んで契約することもあります。この場合、個室が確保され、企業が家賃の20%以上の住宅手当を支給するなどの補助を行えば、優良な実施者の要件の加点対象となります。

育成就労では、一定期間の経過後に本人の意向による転籍が認められます。住環境は外国人が職場を選ぶ重要な要素であり、個室化や住宅手当の充実は定着策としても意味を持ちます。

家賃やその他必要経費を給与から天引きする場合の注意点

家賃や水道光熱費を給与から天引きするには、労働基準法24条1項ただし書に基づき、過半数労働組合又は過半数代表者との書面による労使協定(いわゆる24協定)が必要です。本人の同意だけでは足りません。協定では控除項目を具体的に定め、「管理費」など使途が不明確な名目での控除は避けてください。技能実習生の賃金から「管理費」を徴収した行為が賃金全額払の原則に反し違法とされた裁判例もあります(オオシマニットほか事件・和歌山地田辺支判平成21年7月17日労判991号29頁)。24協定の作成漏れは非常に多く、監査等で必ず指摘されます。

また、日本人社員との均衡にも注意が必要です。技能実習生の寮費が日本人従業員の2.3倍から3.3倍とされていた事案で、日本人の負担額を超えて控除する合意は国籍による差別的取扱い(労働基準法3条)に当たり無効であるとした裁判例があります(デーバー加工サービス事件・東京地判平成23年12月6日判タ1375号113頁)。

不適正な天引きは、未払賃金の問題にとどまりません。特定技能では報酬の一部不払いとして受入れ機関の欠格事由に該当する可能性があり、技能実習・育成就労でも計画の認定取消し等につながり得ます。

厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」も、労使協定に基づく賃金控除について本人が理解できるよう説明し、実際の支給額が明らかになるよう努めることを求めています。控除額と手取りの見込み額を雇用条件書で示しておくことが、トラブル防止の基本です。

外国人雇用に関するご相談は白﨑識隆法律事務所まで

住居・家賃のルールは制度ごとに細かく異なるうえ、育成就労の施行に伴い見直しも進んでいます。当事務所は外国人雇用・入管法務に注力し、併設の白﨑FHR経営労務事務所の社会保険労務士と連携して、雇用条件書・徴収費用の説明書の作成、24協定の整備、社宅規程の見直しまで一貫してサポートしています。技能実習から育成就労への移行準備を含め、お気軽にご相談ください。

 

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